今回は国税不服審判所の裁決事例を紹介します。
<平成27年6月1日採決>
本件は審査請求人が、競売により土地建物を一括取得したケースです。
落札金額を路線価及び類似建物の価額等で案分して算出した取得価額を基に法人税の減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算して申告しました。
これに対して原処分庁は建物等の取得価額は固定資産税評価額による土地と建物等の評価額の比率に基づき算出すべきであるとして、各更正処分等を求めました。
請求人は当初の申告に用いた案分比が認められないとしても不動産鑑定士の鑑定評価による土地と建物等の評価額の比率によるべきである等として、これらの処分の一部取り消しを求めた事案です。
ここで考えるべき要素は下記のとおりです。
◎土地建物の内訳価格(土地と建物等のそれぞれの価格)はどのように決定すべきか
イ.路線価及び類似建物の価額等から求めるべきか
ロ.固定資産税評価額から求めるべきか
ハ.不動産鑑定評価額から求めるべきか
審判所の判断としては落札金額の区分方法として、下記の提示がされております。
一括して購入した土地及び建物等の取得価額については売買契約書等によりそれらの購入代価等が明らかな場合には、通常その購入代価等が取得価額となるが、明らかでない場合には、合理的な方法によってそれらの取得価額を区分する必要がある。
ここで重要なことは合理的な方法とは何かということです。
考えられるものとしては下記の4つです。
①それぞれの資産の売買価額を直接算出する方法
②一方の資産の売買価額を算出して、総額から差し引いた残額を他方の資産の売買価額として産出する方法
③何らかの価額比により算出したそれぞれの資産の価額比で売買総額を案分して、それぞれの資産の売買価額を算出する方法
今回のケースでは審判所は競売によって一括で譲渡される場合には各資産の譲渡価額が区分されておらず、譲渡価額は特別の事情によって定まることや競売物件の特殊性等を考慮し、各資産の価額比によって案分する方法が最も合理的であると判断しました。
では合理的な案分方法としてどのように考えたのでしょうか。
請求人から提出された不動産鑑定評価書については類似建物の価額を求めるに際して異なる構造の建物が選定されていることや建物の鑑定評価額が競売評価書の基礎とされた価格の約*.*倍であるとともに新築請負代金の約2倍となっていることを問題視しました。
以上より、不動産鑑定評価額は合理性のある算出価額とは認めることはできないと判断されました。
これに対して固定資産税評価額は土地の場合は相続税路線価と同様に地価公示価格や売買実例等を基に評価され、家屋の場合は再建築価額に基づいて評価されていることから土地及び家屋の時価を反映しており、合理的であると判断しました。
確かに固定資産税評価額は土地及び家屋を同様のルールで評価していることからある程度の合理性を認めることができるでしょう。
相続税評価額の考え方に照らした場合、土地の固定資産税評価額は時価の7割程度、相続税評価額は時価の8割程度といわれます。
また家屋については固定遺産税評価額と同額で相続税評価額を算出することとなります。
相続税評価額の基準に換算した場合には土地価額は少し上昇し、建物価額は変わらないため両資産の価額比は少し異なります。
今回の事案は、不動産鑑定評価額が新築請負代金や競売評価書の価格と比較して、あまりにも高額すぎる(乖離が大きい)ことも請求が認められなかった理由のひとつではないでしょうか。
ただ不動産競売評価書には様々な事情を考慮する前の土地及び建物の基礎となる価格が提示されています。
実際に不動産競売評価人が物件を調査して評価書を作成している以上、土地及び建物の基礎となる価格で案分することが実態に適している様にも思われますが、皆様はどのようにお考えでしょうか。
今回は固定資産税評価額による案分が合理的であるとされましたが、異なる判断が出された裁決事例もあります。
いずれその裁決事例も紹介させていただこうと思います。

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